トワトワト

どこからか、きこえる かすかな、おと

しずかに目をとじて ここで耳をすませている

風や、草木の揺れるおとや、遠くの鳥のさえずりのなかに

かすかに、たしかにきこえるおと

そっと窓をあけてみる

ひろがる景色

うごきだす空気

どこからかきこえるおとに、

歩きだすわけでもなく

キョロキョロとさがすわけでもなく

しずかに、応える

内と外

野山と街

ひとと、ひと

あらゆるものの、境目とは

あるとおもえば現れ

ないとおもえば溶けてゆく

境界には線などなく

きっとなめらかに、つながっている

そんなことを吹く風のなかにかんじながら

どこからかきこえるおとに 耳をすませていたことさえ

わたしのなかに溶け入る

トワトワト

トワトワト

 

 

手と手をつなぐ

あつい手と、つめたい手

はじめはそれぞれに、じぶんの手だったのが

湿度がつたわり、まざりあい、

そのうち、すっかりなじんでゆく

あっちとこっちが歩み寄り

まるで別だったお互いが

ずっとおなじだったかのように

穏やかに、ちからづよく、寄り添うとき

ああ、もしかすると

じぶんとちがうとおもっていたものは、じぶんだったかもしれない

ここだとおもっていたところは、ここではなかったのかもしれない

あるとおもっていたものは、もうなかったのかもしれないし、

ないとおもっていたものが、ある、かもしれないな

目にみえること

手にふれるもの

耳できこえるもの

下であじわうもの

肌でかんじるもの

ことばに変えられるもの

それらだけではないことに

つないだ手のゆびさきから

きづいてゆくとき

トワトワト

トワトワト

夜に一番近い夕暮れ

誰にも気づかれないよう

宇宙の隙間へ

船を漕ぎ出し

宇宙をほどく

ゆっくりゆっくり

ほどかれた宇宙の真ん中で

重なり合い姿形もなく

空に空を拡げて夕日に染まる

完成された月明かりが

眠りを照らす頃には

遠くであったあなたと

近くであったわたしとが

夜を夜とし許し合い

日が差し込む頃には

海の上を走る列車にゆられ

谷の風を頼りに

緑へと伸びて行く道を

歩いている

優しい物語はあの路地で

生まれたんだろうか?

日向で眠る猫

豆腐屋のおっちゃん

流れ着いた流木

小さなお祭り

遠くに感じたものが

今日の日常

反射する宇宙の隙間から

反射した宇宙の隙間へと トワへ手紙が届く

 

2014

poem:miki kimura

model:tomomi kuratani

photo:madoka horie

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